ラントマンの雑貨やアンティーク買い付け時の、フランスレポート。
蚤の市便り vol.07 2004.3.28
建築物アンティーク事情
 春がやって来ました。光が白くなってお散歩が素敵な季節ですね。フランスもあちこちに小さな花が咲きはじめてとてもきれいです。お天気が良いと人々は日光を求めてテラスに椅子を出します。コーヒーを小さなテーブルに置いて何時間でも日なたでお喋りです。日本では美白ブームで紫外線を避けて生活をする習慣が定着してきたようですが、フランスでは折角のお日さまを避けて歩くなんて誰も思いつきません。カフェやレストランでも日があたるテラスの席からうまっていきます。

 この季節になると楽しそうにお散歩をする人たちがぐっと増えます。古い建築が残っている街をゆっくりと眺めながら散歩するといろいろな見つけものができてとても楽しいのです。人々が住んでいるごく普通のアパルトマンをひとつひとつ眺めながら歩いているだけでも、、、、、
 こちらの建物は石で出来ていることが多いのですが、表の壁にはアクセサリーとしていろいろな彫刻やレリーフが施されています。最初の画像はアールデコのデザインでお花のような幾何学模様が大胆に彫られています。
1920〜30年代ごろのベルエポックと呼ばれていたころのもの。

 このアパルトマンは学生さんが好んで住むステュディオと呼ばれるワンルーム式のアパートが複数入った建物です。外側は石造りで重厚ですが内側は適度に改装されていることが多く、思いの外近代的なシンプルなインテリアだったりします。次の画像、入り口のドアの上にある装飾、これはもっと時代がさかのぼり、古いものは19世紀のものもあります。このような平屋の建物はエショップと呼ばれる一軒屋で家族で暮らす人々に人気があります。
 往々にして内側に小さな(場合によってはびっくりするほど大きな!)素敵な中庭があり外観からは想像できないほど豊かな設えになっていることが多いのです。こういう建物は内装も昔のままクラシックで、大きな暖炉が各部屋にあったり、昔の美しいタイルが床一面に貼られ磨き込まれて大事に使われていたりします。ところどころにある木の手すりやドアは深い飴色になっていてずしりと重く映画のシーンに出てきそうな雰囲気。照明は全体に暗めで時間がゆっくりと流れていきます。 フランスではこのような建物を全部壊して建て直すということはとても稀です。痛みがでてどうしても作り替えが必要な場合でも表側の美しい石壁は残し、その後ろ側だけ新しく建築しなおす方法が一般的です。

 工事現場を見ると石で作られた厚みのある表側の壁だけがアクロバティックに取り残され.、その裏側は見事にきれいさっぱり無くなっていることがあります。巨大なまな板が地面に垂直に立っているみたいに。地震が少ないフランスだからできる工程なのかなあと日本人の私は目を丸くして眺めるばかりです。こんなふうにして古い町並みを守ることが日常の国だからアンティークも身近なんですね。(Y)
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