ラントマンの雑貨やアンティーク買い付け時の、フランスレポート。

蚤の市便り vol.34 2006.9.30
ホーローのマーク
ホーローのマーク
不思議な絵皿
 フランスにはおとぎ話がモチーフになった古い絵皿がたくさんあります。今日は奇妙な絵からなんとなく目が離せないような、不思議なデザート皿の写真を撮ってみました。4枚とも一緒に蚤の市に出ていたもので、1900年初期の陶器です。直径19センチほどのこのお皿は、ひと切れのケーキやクロワッサンをのせるのにちょうど便利で毎日使っています。象牙色の陶肌にボルドーカラーの絵付けがシック、バラのレリーフのまわりにある縁のラインのみが手描きです。

 1枚ずつよく見ると、結構残酷な、毒のあるテーマが描かれているんです。大ゾウに乗ってトラを狩る貴族の様子、ヒョウに襲われた少女が倒れた傍らに、銃をかまえる男。森のブランコで遊ぶ子供たちの、のどかな風景かと思いきやなんと、ブランコに乗る大人を二人の悲しげな子供が加勢して押している様子 (普通は逆ですね)。少年たちがあげている凧には冷たく無表情な人の顔が描かれています。(画像でよく見えるといいのですが)

 4枚のモチーフすべてが、ドキッとするようなアイロニーに満ちていて、見れば見るほど不思議な世界に釘付けになるような雰囲気があります。人間の奥深くに眠っているエゴイズムをテーマにしてお皿のモチーフに使ってしまうところは、さすがにフィロソフィー(哲学)の国、フランスの気質を感じます。このお皿、悲しいシーンをみて悲しくなるためのものではなく、そういう人間のなかに潜む邪悪な心は醜いよ、と語りかけてくる、メッセージのこもったものなんですね。描かれている登場人物(動物)の顔を見ればわかります。(Y)
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