ラントマンの雑貨やアンティーク買い付け時の、フランスレポート。
蚤の市便り vol.11 2004.8.24
グラス割れれば・・・
 今でこそ家庭でワインをあけることも珍しくなくなりましたが、ワインブームが訪れる前は日本の家庭にワイングラスが揃えてあることがちょっと特別な雰囲気でしたね。フランスはさすがにワインの国、学生の小さなアパートでの戸棚にもエレガントな細い足のついたワイングラスが2つ3つは無造作に入っているのが普通です。

 以前私がフランスの女性とアパートをシェアして暮らしていた頃のことです。当時は食器や台所用品はすべて彼女が提供してくれていて、私はそれを借りて毎日食事をしていました。食器棚には1ダースのワイングラス、半ダースの大小のお皿、クーヴェールと呼ばれるナイフとフォークがやはり1ダース、それにこれだけは私自身で買い求めた朝食用のカフェオレボウルが各々1ずつ。

 ある日、使ったあとのグラスを洗っていてうっかり手を滑らせキッチンの床のタイルの上に落としてしまったのです。フラミンゴのようなグラスの足は高く軽やかな音とともに2つに折れ、丸いグラスの部分も粉々。音を聞きつけた同居人がやって来ます。「ごめんね、手が滑ってグラスを割っちゃった。」私が謝ると彼女はこう言いました。「大丈夫、ケガがなければそれでいいわよ。知ってる?フランスではグラスを割ったら幸運がやって来るって言うのよ!日本では言わない??」

 割れやすいワイングラスをたくさん使うフランスだからこそ、生まれたことわざなのでしょうか。なんて優しくて粋なフレーズだろうとますますフランスが好きになったものでした。(Y)
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